OtoLAMの写真
乳幼児の治りづらい中耳炎に

 近年の薬剤耐性菌の増加により乳幼児の中耳炎の難治化が深刻な問題となっております。この問題を少しでも改善し、当院のモットーである「いい医療」を提供するために、レーザー鼓膜開窓装置であるオトラム(OtoLAM)を2015年7月に導入しました。
 鼓膜切開が必要な重症中耳炎の患者さんに対して、鼓膜にコンピューター制御で正確に穿孔(穴)を作成し、中耳炎の治癒を早めます。(軽症、中等症の中耳炎に対しては鼓膜切開はいたしません。)

OtoLAM(オトラム)とは?

 ルミナス社が開発したレーザー治療装置です。非常に細いレーザービームをコンピューター制御で螺旋状に照射し、鼓膜に正確に円形の穴を開けることができます。

OtoLAMによる鼓膜開窓

通常の鼓膜切開との違い

 重症な中耳炎では鼓膜の内側に膿が貯まり、パンパンに膨れた状態になります。このよう状態には、従来より「鼓膜切開刀」というメスにて鼓膜に切り込みを入れ、貯まった膿を出す治療が行われております。しかし、「鼓膜切開刀」による鼓膜切開では、3日後には切開し作成した穴がほぼ閉じてしまうので、膿を出しきる前にまた膿が溜まってしまう状態になることが多く生じておりました。
 一方、OtoLAMによる鼓膜開窓では鼓膜に円形の穴を開けるので、効率的に排膿をすることが可能で、作成した穴も2週間程度残り、しっかりと膿を出し切ることができます。

  OtoLAMにて切開直後
オトラム切開直後
開窓部から中耳の粘膜が観察できる(左鼓膜)
術後2週間
オトラム2週間後
十分に排膿し、中耳内がしっかり換気され、鼓膜、中耳粘膜が正常化したがまだ穴は残存している
 
術後4週間
オトラム1ヶ月後
穴は跡形もなく閉鎖し、治癒している
 

OtoLAM(オトラム)で鼓膜切開するメリット

  • 抗菌薬(抗生物質)の使用量を減らすことができる

膿を出して細菌の量を減らすことで、抗生物質の使用期間を短縮することができます。

  • 痛みが少ない

通常のメスによる鼓膜切開と比較して、痛みが少ないです。なお、当院では赤ちゃんであっても全例、しっかりと鼓膜麻酔をした上で施行しております。

  • 出血が少ない

炎症を持った鼓膜は非常に血流が良く、出血し易い状態ですが、OtoLAMはレーザーで蒸散して穴を開けますので出血を非常に少なく抑えることができます。出血が少ないことで施術直後に開けた穴から中耳の粘膜を観察することが可能になり、その後の治療に役立てることが可能になります。

  • 鼓膜へのダメージが少ない

鼓膜切開刀にてOtoLAMと同様にしっかり排膿できる穴を鼓膜を作成しようとすれば、大きく鼓膜を切らなくてはならず、鼓膜の繊維や血管を多数切ってしまいます。それにより鼓膜の菲薄化や変形が生じてしまうリスクがあります。OtoLAMでは、効率の良い円形の穴を作成するので、そのようなことはほとんどありません。

  • 中耳へ効率よく抗菌薬を届けることができる

OtoLAMで作成した穴は十分な面積が保持されるので、この穴から鼓膜を通して抗菌薬を点耳薬として高濃度に届けることができるようになります。それにより治療期間の短縮が望めます。

  • 安全に鼓膜切開ができる

従来の鼓膜切開では ”狭い耳穴の中で刃物を使う” 必要があり、じっとしていられないお子さんでは非常に危険な手術でした。OtoLAMによる鼓膜切開では、刃物は使用せず、レーザーの照射時間もわずか0.2秒ですので、非常に安全に鼓膜切開(開窓)が施行できます。

  

診療に関するお問い合わせ以外(健康相談等)の電話はご遠慮ください